たまには焼肉を食べに行きたいよう、と妻が言うので、近くの焼肉屋「金剛」に行った。
個人がやってる感じの、アカ抜けなさが漂う入り口。入店すると、土曜の夜だと言うのに客は、我々のほかに一組しかいない。
大丈夫かな、ここ。いや、もしもおいしくなかったら、次は来なければいいだけのこと。人はそういった失敗を繰り返して成長して行くのだ。そうだそうだ。
勝手に覚悟を決め、肉を注文した。メニューはシンプルで、あまりごちゃごちゃした選択肢はない。カルビとかロースとかの定番を注文した。
店員は二人だけらしく、奥でおっちゃんが肉を作る、というか調理して、若い男性店員が客対応をするというスタイルのようだ。忙しくなってくると、おっちゃんも肉運び係をやる。
やがてやってきた肉は、なんというか、普通だった。
ああ、普通だなと思って肉を焼いて食う。
あれ、うまい。妻も同意見だった。
うーむ、これは味に対するハードルを「どうせおいしくないよ」と下げすぎたせいだろうか。いや、たしかにうまい。そんじょそこらの焼肉屋で肉を食うよりうまいのだ。
私の気のせいではないのは、いつもは何を食っても文句を言う妻が、おいしいおいしいと言って食っていることからもわかる。まあ、おいしいんだろう。
はっ。
これは作戦なんだろうか。店の見た目のチープさでハードルをめいっぱい下げておき、うまい肉でうならせる。その作戦にまんまとハマってしまったということだろうか。
けど、よく考えると、そんな作戦を実行するメリットがまるで思いつかないので、わざとやってる訳じゃないようだ。
店もせまいし、駐車場も3台分しかないけども、まあ、それくらいでちょうどいいのかも知れない。
肉がおいしいのも、そこそこの数の客しかこないからかも知れないな。
どひゃー、と驚く派手さはないけども、地味においしい焼き肉屋を発見してよかったよかった、と言ったところで、今回の体験談を終わる。
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