妻が定期的に発する「たまには焼肉を食べに行きたい」というリクエストにお応えして、駅前の焼肉屋に行ってきた。
焼肉の南山だ。
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ネットで口コミを見ると「高いけど、おいしい」と評判だった。なるほど、そういう系の店か。たまにはいいだろう。
当日は、台風が接近しており、道中、ビニール傘を破壊されている人が多数いた。
妻は、よせばいいのにひらひらしたスカートをはいており、店の前で突風に吹かれて、スカートの中を派手に開示していた。
「ぎゃああっ」
妻は悲鳴をあげた。
びっくりしたとき、人は本当に「ぎゃああ」という悲鳴をあげるもんなんだなあ。私は感心しながら「ひどい目にあったね」と、一応フォローらしき声をかけておいた。
電車が止まっているのか、店内は「じゃあ焼肉でも食って行くか」という雰囲気のおやじサラリーマンでいっぱいだった。
メニューを開く。
む、ベラボーというわけではないが、結構高い。とりあえず、ロースやカルビなどの定番を注文する。
注文したのは「上」とかの、焼肉グレードを示す接頭語がなにもついてない肉だ。
最下級の肉。それでも、結構な値段はするのであった。
焼肉がやってきて、網の上で焼かれる。うまそうだ。
食ってみると、うまいんだけど普通だった。普通の焼肉だった。
なにを期待していたのか。味に対してさほどこだわりのない私が、肉の細かい味などわかるわけがないではないか。普通においしい、それだけで十分ではないのか。
妻の反応も「うん、おいしいよ」だった。顔も無表情に近い。私と同じく「高級店だと期待しすぎてハードルがあがってしまった」という状態なんだろうか。
いや、もう一つ理由が考えられる。
「特」がつくような最上級グレードの焼肉は、びっくりするほどうまいのかも知れない。
けど、安くておいしいものを日夜捜し求める我々は、「特」グレードの肉に手を出すことなく、適当に追加注文して、適当に満足して帰っ
たのだ。
店はすごく混んでいたし、お金をたくさん出せば、たぶんおいしい肉が食べられるんじゃないだろうか。
まあ、そんな感じ。安くておいしい店はなかなかないよなあ、と残念に思いつつ、今回の体験談を終わる。